2012年4月30日月曜日

【引きこもりからどう抜け出していくのか】/不登校・引きこもりに関するエッセイ・論評


(1)引きこもりと不登校、ニート

 不登校・引きこもりの状態に、私は本質的な差異はないと考えています。不登校は、学校所属を前提とし、引きこもりはそれを前提としませんので、一般には不登校のほうが年齢層が低くなります。引きこもりは学校在籍を含みますが、それを超えた年齢層に広がっています。

 主にこの学校所属と年齢層の違いが、両者に副次的な違いをもたらしています。

 不登校は、学校に登校できない(しない)状態像であり、それは引きこもりが唯一の理由ではありません。実はニート(NEET=Not in Enployment,Educatin or Training、若年無業者)も不登校と同じで、引きこもりがニートの唯一の理由ではありません。不登校には非行型、ニートにはヤンキー型と言われる人たちがいて、これは引きこもりとは対極の状態像を示す人たちです(背景には共通する部分はあります)。

 そのような引きこもりが主な理由ではない不登校、ニートに関しては、以下に述べる事情は必ずしも当てはまりません。引きこもりを共通する状態像であると考え、その本質、背景、現状および対応(脱出)方法を、比較的平易に説明します。

 引きこもりとは何かは、いくつかの原因や定義づけがされています。いずれも参考になる意見ですが、あまり深入りしないことにします。対人関係(特にある人との継続的な人間関係)から距離をおこうとするのが、引きこもり現象の中心的な部分です。「外出する・しない」というのは、それに比べれば二次的な要素でしょう。

 ただ一般には、この理解が定着しているとは思えませんから、この文の中でも自宅からほとんど外出しない人を引きこもりと表現することもあります。

(2)引きこもりのさまざまな原因・理由

 引きこもり(前述の意味で不登校、ニートを含む。以下同じ)が、日本でこのように増えていることに関しては、いくつかの意見があります。私がこれまで見聞きしたこと、本で読んだことのなかで、納得できる理由を列挙してみます。

@日本が、特に1960年代以降の高度経済成長期をとおして、高度に発達した経済社会になり豊かな国になっている。

A食生活が、この30〜40年間に大きく変わり、それらが心身の状態に影響している。農薬の影響、カルシウムなどミネラルの不足、乳幼児の母乳哺育の後退。

B旧来の家族関係が崩れ、新たな家族関係が十分に形成されないなかで、かなり多くの家族内にゆがみが出、矛盾がたまり、家族内の弱い立場の人(子どもなど)に問題が表われやすくなっている。

C伝統的な地域的共同体が崩れ、隣近所のつながりが少ない新興開発住宅地域やマンション住居者を典型的に、子育てが家族内のプライベートな事柄になっている。ここでは育児書が子育ての教材になり子育てが画一的な基準に左右されやすくなっている。

D明治期につくられた学校制度が百年以上の歳月を経て、子どもと社会の実情に柔軟に対応できずにいる。それが不登校の子どもとして表面化している。

E日本社会が変革期に入り、さまざまなゆがみや矛盾が、社会のなかの弱者に当たる人たちのところで表面化する社会病理現象を示している。

 見聞きしたことを私なりのしかたで表わしましたので、必ずしも一般に普及している表現とは同じではないかもしれませんが、おおむねこのような理由が語られているように思います。これらは、子どもの育つ環境条件を述べるという点で共通しています。

 私は、これらの理由、背景説明にそれぞれに納得できる部分があります。

 引きこもりに至る子どもの生育過程には、虐待、服従、いじめ、放置など、子どもに対する強い抑圧や禁止が、相当期間にわたって継続したり、繰り返されたりする例を見ることができます。そうなる背景には、上に述べたような、いくつかの理由があり、家族や学校、子どもの世界での精神的な圧迫、追い込まれ状態のはけ口が、「より弱い子ども」に向けられているためと説明できます。

 この「より弱い子ども」とは、その集団内における相対的な位置を表わします。したがって、家族のなかで父親や祖父母に対して比較的弱い立場の母親が、精神的な圧迫感情(ストレス)を、より弱い立場の子どもに向けることもあります。複数の子ども(きょうだい)がいる場合は、必ずしも末子が弱いというわけではなく、「よい子」でいようとする反発しないタイプの子ども(ときには長男や長女)に向けられることもあります。学校などの子ども世界では、おとなしい子、障害のある子、孤立しがちな子に向けられることもあります。

 これらは、ストレスが、強い者から弱い者に流れていく一般的な経路を示しています。同時に、その弱い立場の人の前で、保護者、教師や常識に富む人の、この経路を阻止する力が弱まっていることも示しているように思います。

 これらはおおよそ上に述べた要因の連鎖反応として説明することが可能でしょう。しかしそれにもかかわらず、それではうまく説明できない引きこもりに特有の、共通する理由があると思います。少なくとも引きこもり当事者たちに、ある期間接していれば、ごく普通に感じられる原因や背景が、この外側にあります。

(3)五感が敏感な人たち

 上述の子どもが育つ環境条件のほかに人が引きこもるもう一面の理由があります。引きこもりは、本人が持っている(天性の)要素と、後天的な要素が組み合わさってなります。上記では、後天的な要素を列挙しました。

 次に、子どものもつ先天的な要素の特色を述べましょう。ひとことで言えば、「ヒトの心の雰囲気が自然にわかってしまう繊細な感性の持ち主」ということです。先天的要素ではあるけれども、それがかつてのように生育過程で変容を遂げずに、ある年齢まで持ち越されるようになった、そういう社会状態が関係しています。

 30代の男性Aくんが、ある日「きょう地下鉄に乗っていたら銀行のにおいがして…」(気が重くなった)と言ってきました。「銀行のにおい? 病院のにおいならわかるけど、銀行のにおいってどんな?」と聞き返すと、「銀行でも感じるんだけれども、もう少し違う場でも感じる、ビジネスマンのにおいかな」という答えです。少しわかる気がしました。

 Aくんの引きこもりとしての程度は軽いかもしれませんが、人間関係をつくる点では、ある限定した人にしか関われません。彼の「におい」という点に注目して、日ごろの言動をふり返ると、ゴミや、食べ物などに神経質になっている姿が思い出されます。Aくんは、おそらく嗅覚が鋭い感性の持ち主なのです。

 20代になったHくんの話しをしましょう。Hくんのお母さんから「食べ物の注文は多いです。特に料理をするときは気を遣います」と聞いていました。Hくんに「食べ物の好き嫌いは?」ときくと、「味の強いのが苦手なんです。それで好き嫌いは多いと思います」という返事でした。

 Hくんに限らず、食べ物に好き嫌いがある(その中心は、嫌いで食べられない物がある)というのは、引きこもりの人に比較的多いと思います。いろいろな人から話しを聞いてみて、彼(彼女)たちは、味覚が敏感である、そのために食べられない物があるというのが私の得た結論です。

 もちろん、「違いがわかる」味覚の持ち主であっても、それで自動的に好き嫌いが多くなるわけではありません。味覚が優れ、味の違いがわかり、それでも何でも食べられる人もいると思えるからです。

 嗅覚と味覚について、その鋭さの表われを二人の例で示しました。

 次に、視覚(目)と聴覚(耳)についても述べておきましょう。この感覚が優れている例は、嗅覚や味覚のような形で把握することができません。それは視力がよい、聴力がよい、というのとは少し違うと思うからです。視力が低くても視覚が優れている、聴力が低くても聴覚が優れているという現象があるのです。

 私たちは、たとえば街中を歩いていると、いろいろな人がいて、いろいろな物があって、さまざまなものが見え、さまざまな音が耳に入ります。しかし「見て見えず、聞いて聞こえず」という対応が自然にできています。

 このことわざ的表現は、注意力の散漫さを示すのですが、この場合にも共通する言い方です。視覚や聴覚から入る情報を、必要なものだけを自動的に仕分けしながら取りいれています。目に入ってもまったく意識しなかったり、耳に入ってくるものに一つひとつ反応しないようになっています。

 そういうことが自然にできるから日常生活ができるのです。自然に、意識外で、自動的に取捨選択をしながら、目や耳から入る外部情報を取り入れているのです。この取捨選択をし外部情報を取り入れるという過程が、引きこもりの人には必ずしもうまくいかない人がいるのです。

 たとえば、TくんはYくんと話し込んでいます。そこにTくんの顔見知りであるBくんが来て、Nくんと話し始めます。そうするとTくんは、一方ではYくん話しながら、他方では隣に座っているBくんとNくんの話しが気になるし、実際にそこではおよそどんな話しが進行しているのかがわかってしまうのです。たんに言葉だけでなく、BくんとNくんの表情や動きなどもわかるし、それによって何が話されているのかを把握する、会話以外の情報源にもなっているのです。

 Tくんタイプの人は、このような場合だけでなく、一般に、目や耳から入ってくる外部情報を、自動的に取捨選択して取り入れることが苦手です。いやもしかしたら、場合によってはそれを苦手とは感じていないのかもしれません。しかしこの能力(?)は、日常生活の面で、さまざまな不都合を招いていることは確かです。

2012年4月28日土曜日

FAQ 株式会社アライブビジネス


府省共通研究開発管理システムのことであり、助成金などによる研究開発管理に係る一連のプロセス(応募受付→審査→採択→採択課題管理→成果報告等)をオンライン化する府省横断的なシステムです。最近は助成金応募の条件に挙げられることが多くなってきました。

特に民間企業の方から「当社は研究機関どころか研究部門も無いので対象外では?」との質問を受けることがあります。

2012年4月27日金曜日

William N.Tindall, Robert S.Beardsley, Carole L.Kimberlin, 平井 みどり, 楠元 喬, 竹内 由和, 松山 賢治, 武政 文彦: 本


2012年4月26日木曜日

「スマート家電」という名でネット家電が復権するかもしれない4つの理由


 「白物家電をネットに接続して付加価値を付ける」というと、「またか」と苦笑いを浮かべる人も多いだろう。

 「外出先から冷蔵庫の中身を確認できたら買い物の時に便利」とか「オーブン・レンジで、レシピをダウンロードできるようにしたら料理のバリエーションが膨らむのではないか」というようなアイディアは、インターネットが普及し始めた当初から議論されていたが、実際の製品として結実した例はあまりなく、商業的に成功した例はほぼ皆無だ。

 しかし、以前うまくいかなかったからといって、これからもダメだと決めつけるのは早計だ。

 初期のインターネット家電が成功しなかった理由の一つは、家電にネット接続機能を付加するコストが大きかったこと。

 例えば、シャープは1999年に「インターネットでレシピをダウンロードできるオーブン・レンジ」を発表し、注目を集めた。しかし、同製品は「パソコンを使って、専用メモリー装置にダウンロードしたレシピを有線ケーブルでレンジに転送する」という仕組みになっていた。つまり、レンジのそばに、ネットにつないだパソコンと別売りのメモリー装置を設置しなければならないのだ。まだ無線LANが普及していなかった時代に、インターネット回線をレンジのそばまでひっぱってくることは容易ではない。またダイヤルアップのインターネット接続であればダウンロードの度に通信料金がかかる。

 当時、そこまでしてレシピをダウンロードしたいと考えるユーザはほとんどいなかった。

2012年4月24日火曜日

人間原理とは何か


この宇宙には、なぜ私たち人間のような理性的な存在者がいるのだろうか。人間は偶然この世に現れたのか、それとも現れるべくして現れたのか。人間が存在しない世界は可能だったのか。

1. 人間の存在は奇跡である

人間のような理性的存在者が、否それどころか原始的な単細胞生物であっても、宇宙に生まれてきたことは必然ではなかった。もしもビッグバン初期の膨張速度が実際よりほんの少し速ければ、重元素(水素やヘリウム以外の元素)や銀河が形成されず、低濃度の水素ガスが希薄になるだけの歴史しか展開しなかっただろう。逆にもし膨張速度が実際よりほんの少し遅ければ、宇宙は数分の一秒以内に崩壊しただろう。いずれの場合にも、生命の存在余地はない。生命を育む宇宙を初期の特異点が作る確率は10のマイナス1230乗と試算されている。

2012年4月23日月曜日

ブログテーマ[ブログのテーマ]|インフォトップの「い・ろ・は」


まだまだ暑い日が続きますね。

弊社の営業チームも、外出するときは汗ダラダラで帰還してきます(;´Д`A

水分補給は「喉がかわいた…」と思ってからでは遅いらしいです。

常に水分は取り続けてくださいね^^♪もちろんお腹をくださない程度に…

常に冷たいお茶を水筒に入れて、「水筒男子」もしくは「水筒女子」を目指してはいかが?ヽ(´□`。)ノ

さて、前回の記事 で「稼げるブログ」の条件を簡単に提示しました。

では、まずは何から始めましょうか??

ズバリ、ブログのコンテンツを充実させることです。

いくらあなたの人望で多くの人にブログを紹介しても

記事がほとんどなければ

「まだ全然できてないじゃん……。」

と静かにページを閉じられてしまうでしょう……。

2012年4月21日土曜日

中央教育審議会 教育振興基本計画特別部会(第8回)議事録・配付資料 [参考5] 第2編 第3節 フランス−文部科学省


中央教育審議会 教育振興基本計画特別部会(第8回)議事録・配付資料 [参考5] 第2編 第3節 フランス−文部科学省

1.教育基本計画の法的位置づけ、策定プロセス、計画期間

(1) 策定プロセス

 2005年にフランスの教育基本法およびこれに付随する基本計画を改定するにあたって、国民的議論が大々的に展開された。具体的には2003年9月に、「学校の未来に対する全国委員会」が設置された。2003年11月から2004年2月までに「学校の未来に対する国民討論」がフランス全国各地で15,000回にわたって開催され、さらに電子メールでの意見集約も行われた(注1)。この結果が2004年4月に『議論の鏡 Miroir du débat』という報告書にまとめられた。
 2004年10月よりフィヨン教育大臣が法案を準備し、2005年に閣僚評議会(le conseil des ministres)で提示し、議会に提出した。そして3月24日に、「学校の未来のための基本・計画法 Loi d'orientation pour l'avenir de l'école」(教育基本法)が制定された。教育相の名前から通称フィヨン法と呼ばれる。我が国の教育基本法と異なり、教育の原理原則に加え、教育の中長期的目標や学校教育制度に関する規定を含む法律である。過去には、「教育基本法」として、1975年(通称アビ法)と1989年(通称:ジョスパン法)が制定されている。

図表2-3-1 学校の未来に対する国民討論から法律制定までの流れ

  • (注1)藤井佐知子「『学校の未来に関する国民討論』を展開−フランスで教育基本法改正の動き始まる」 『内外教育』5456号、2004年2月20日

(2) 法的位置づけ

 本計画は、「学校の未来のための基本・計画法」の附属報告書(Rapport annexé)である。ただし、この附属報告書は、憲法院の審査によって手続き上の不備から違憲とされ最終的に削除されたが、政府は報告書に盛り込んだ方針や施策は実施に移す意向を表明している(注1)。報告書の表紙には、題名の下に「この報告書は学校の未来のための基本計画法の一部をなすものではもはやないが、正規の法的措置によって実施されるときの参考であることに変わりはない(注2)」とある。

図表2-3-2 「学校の未来のための基本計画法」の附属報告書(Rapport annexé)

  • (注1)藤井佐知子「共通基礎学力の確実な習得を目指して−フランスで新しい教育基本法制定」 『内外教育』5568号、2005年5月27日
  • (注2)Ce rapport annexé ne fait plus partie de la loi d'orientation et de programme pour l'avenir de l'École mais il reste la référence pour sa mise en application par voie réglementaire.

(3) 計画期間

 附属報告書末尾の数値目標は2010年を目標年度としている。
 その他、目標計画や予算などは2006年〜2008年、2006年〜2010年などとなっている。

2.教育基本計画の体系

(1) 計画の構成

. 基本方針 .Orientations

学校のための新たな希望 Une nouvelle ambition pour l'école

1.より公正な学校:信頼ある学校 1.Une école plus juste : l'école de la confiance
  • 1.1 幼稚園 L'école maternelle
  • 1.2 必要不可欠な共通基礎知識技能の習得 La maîtrise des connaissances et des compétences indispensables
  • 1.3 教育成功個別プログラム Le programme personnalisé de réussite éducative
  • 1.4 優等生奨学金 Les bourses au mérite
  • 1.5 教育優先地区(ZEP)と教育成功チーム L'éducation prioritaire et les équipes de réussite éducative
  • 1.6 進路指導 L'orientation
  • 1.7 社会編入への支援 Le soutien à l'insertion
  • 1.8 学校保健・社会福祉サービス La santé à l'école, le service social
  • 1.9 障害のある児童生徒の就学 La scolarisation des élèves handicapés
  • 1.10 男女平等の促進 La promotion de l'égalité entre les filles et les garçons
2.より効率的な学校:質の高い学校 2.Une école plus efficace : l'école de la qualité
  • 2.1 教育高等審議会 Le Haut conseil de l'éducation
  • 2.2 契約私立学校 L'enseignement privé sous contrat
  • 2.3 教員の使命 La mission des enseignants
  • 2.4 教員の採用・養成 Le recrutement et la formation initiale des enseignants
  • 2.5 教員の研修 La formation continue des enseignants
  • 2.6 学校の運営 Le fonctionnement des établissements
  • 2.7 学校における安全 La sécurité dans les établissements
  • 2.8 リセ(高校) Le lycée
  • 2.9 試験 Les examens
  • 2.10 情報通信技術(ICT) Les technologies de l'information et de la communication (TIC)
  • 2.11 生涯教育 La formation tout au long de la vie
3.より開かれた学校:国民の意見に注意を払う学校 3.Une école plus ouverte : l'école à l'écoute de la Nation
  • 3.1 父母との関係 Les relations avec les parents
  • 3.2 地方議会議員との連携 Le partenariat avec les élus
  • 3.3 非営利社団との連携 Le partenariat avec les associations
  • 3.4 経済界との関係 Les relations avec le monde économique
  • 3.5 ヨーロッパへの広がりと国際的な広がり La dimension européenne et internationale
  • 3.6 在外フランス人学校とのネットワーク Le réseau des établissements d'enseignement français à l'étranger
  • 3.7 芸術教育・文化活動 L'éducation artistique et l'action culturelle
  • 3.8 体育スポーツ教育 L'éducation physique et sportive
  • 3.9 メディア教育 L'éducation aux médias
  • 3.10 宗教に関する事実の教育 L'enseignement du fait religieux
  • 3.11 持続的発展のための環境教育 L'éducation à l'environnement pour un développement durable
  • 教育制度運営の新たな状況 Une nouvelle donne pour le pilotage du système éducatif

.目標 .Objectifs

  •  目標については小見出しがなく、7つの目標(後述)が記述されている。

(2)計画における就学前教育・初等教育・中等教育・高等教育・生涯学習の該当箇所

 上記の計画を、就学前教育・初等教育・中等教育・高等教育・生涯学習に割り当てると以下の項目が該当する。

図表2-3-3 各章と教育分野の対応

教育分野 計画の該当章
就学前教育 1.1 幼稚園
初等教育 1.2 必要不可欠な共通基礎知識技能の習得(小・中)、1.3 教育成功個別プログラム(小・中)
中等教育 1.2 必要不可欠な共通基礎知識技能の習得(小・中)、1.3 教育成功個別プログラム(小・中)、1.4 優等生奨学金(中・高)、1.6 進路指導(主に中学)、1.7 社会編入への支援(主に中学)、1.9 障害のある児童生徒の就学(中・高)、2.8 リセ(高校)、2.9 試験、2.10 情報通信技術(ICT) (中・高)
高等教育 (基本方針で、同一世代の50パーセントを高等教育修了に至らせることを目標に掲げているがそれ以外の項目では特になし)
生涯学習 2.11 生涯学習
  • (注)前述の通り、番号は筆者が便宜上つけたものである
  • (注)横断的な項目については省略した

3.教育基本計画における重点分野の有無

 計画を離れて、「学校の未来のための基本計画法」本体ではあるが、法律の条文のなかに、義務教育期間中に身につけるべき知識および能力が明記されている点が注目されており、計画にもその要素がちりばめられていると考えられる。同法9条は以下のように定めている。
 「義務教育は、各人が学校教育を首尾よく終え、引き続き教育を受け続け、個人的そして職業的将来を築き、社会生活での成功を収めるために必要不可欠な知識および能力の総体からなる共通の基礎を獲得するのに必要な諸手段を各人に保障しなくてはならない(注1)。」
 そして、習得すべき共通の基礎として以下の5点を挙げている。

  •  フランス語の習得(注2)
  •  数学の主要な基礎原理の習得
  •  市民権の自由な行使を可能にする人文的・科学的教養
  •  一つ以上の現代外国語の習得
  •  日常的に用いられる情報・通信技術の習得

 計画の中でも「1.2不可欠な能力や知識の習得(La maîtrise des connaissances et des compétences indispensables)」のなかで上記5項目が掲げられているほか、「.目標」の中では7つの数値目標のうち2項目が外国語の習得に関する数値目標である。
 また、計画に焦点をあててみると、特に重点分野という項目が示されているわけではない。とは言うものの、計画の冒頭の「基本方針」部分は注目に値する。
 この中で、新教育基本法は過去15年におけるフランス社会及び学校の進展に対応することを目指しているとしている(注3)。
 このなかで、国家が保証すべき目標として

  1. 生徒全員が学校教育の終了時点で何らかの公認資格(修了証Diplôme または公認職業資格 qualification (professionnelle)reconnueのいずれか)を獲得すること
  2. 同一年齢層(注4)の80パーセントがバカロレア(高校卒業資格試験兼大学入学資格試験)水準に到達すること
  3. 同一年齢層の50パーセントを高等教育修了に導くこと

 の3点を掲げており、学校教育をきちんと修了させることを重視していることが窺われる。

  • (注1)La scolarité obligatoire doit au moins garantir à chaque élève les moyens nécessaires à l'acquisition d'un socle commun constitué d'un ensemble de connaissances et de compétences qu'il est indispensable de maîtriser pour accomplir avec succès sa scolarité, poursuivre sa formation, construire son avenir personnel et professionnel et réussir sa vie en société.
  • (注2)
    • - la maîtrise de la langue francaise ;
    • - la maîtrise des principaux éléments de mathématiques ;
    • - une culture humaniste et scientifique permettant le libre exercice de la citoyenneté ;
    • - la pratique d'au moins une langue vivante étrangère ;
    • - la maîtrise des techniques usuelles de l'information et de la communication.
  • (注3)改正前の教育基本法(通称ジョスパン法、1989年成立)では、生徒の多様性に応じた教育を行ってすべての児童生徒を成功に導くという理念を掲げていた。そして2000年までにすべての者が職業資格を取得し、かつ同一年齢層の80パーセントがバカロレア(高校卒業資格試験件大学入学資格試験)水準に達するようにする、という具体的目標を定めていた。しかし、目標が達成されないばかりか、教育の状況はより深刻になっており格差も広がっている。これに対して、現行の教育システムと現代社会がミスマッチを起こしていることが問題であるという視点の下、社会変動に対して学校はどのように立ち向かうべきかという議論が、教育基本法改正に向けて行われた。
    • (参考)藤井佐知子「共通基礎学力の確実な習得を目指して−フランスで新しい教育基本法制定」『内外教育』5,568号、2005年5月27日
  • (注4)フランスは留年率が高く、例えば小学校5年生(Cours moyen 2e année)では、正規の年齢である10歳児は77.7パーセント、年齢超過児が20.2パーセントいる(1999〜2000年度)。中学校4年生(普通科、Quatrième générale)では正規の年齢である13歳児は64.4パーセントで年齢超過が29.0パーセントに上る(2002〜2003年度)。このため、高校卒業年齢もまちまちになるため、「同一年齢層」が統計的に重視される。
    • (資料)Ministère de la jeunesse, de l'éducation nationale, et de la recherche "Repères Références Statistiques 2003"

4.主要施策の内容

 計画の中の施策内容は以下の通りである。