「森と芸術」 | 弐代目・青い日記帳
「森と芸術」 | 弐代目・青い日記帳
東京都庭園美術館で開催中の「森と芸術−私たちの中にひそむすばらしい『森』の記憶をたどってみよう」展に行って来ました。
日本のみならず世界的にも稀有なアール・デコ様式の邸宅美術館である東京都庭園美術館。他の美術館では味わえない独特の雰囲気の中展覧会を楽しめる美術館です。
ここで作品を拝見すると3倍増しによく観えるとの都市伝説もまんざら嘘ではありません。
毎回、館内の装飾を生かした素敵な展覧会を開催してくれています。しかし今回は建物内部だけに飽き足らず、庭園美術館の敷地全体をフル活用。
隣接する国立科学博物館付属自然教育園とともに、都心とは思えない緑豊かな「白金の森」を形成している庭園美術館で開催することを主眼にしたとしか思えない「森と芸術展」。これを観ずして本当の庭園美術館の魅力語ること出来ません。
後世まで語り継がれる展覧会です。
いつものようにラリックの美しいガラス・レリーフに出迎えられ庭園美術館正面玄関を入ったらまず左側に目を遣ると…
普段は非公開の部屋の扉が開き、そこでは東大博物館からやって来たこんな魅惑的な森の動物たちが来館者を出迎えてくれます。
俳優ジェームズ·フランコは誰ですか?
東京大学総合研究博物館 インターメディアテク(IMT)
寄付研究部門制作 クリエーティブ・ディレクション:西野嘉章
≪森のカメラ・オブスクラ≫
東京大学総合研究博物館
モバイルミュージアム 2011年 同館蔵
注:展示会場の画像はプレス内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
(撮影:@yukitwi)
展示構成は以下の通りです。
第1章:楽園としての森
第2章:神話と伝説の森
第3章:風景画のなかの森
第4章:アール・ヌーヴォーと象徴の森
第5章:庭園と「聖なる森」
第6章:メルヘンと絵本の森
第7章:シュルレアリスムの森
第8章:日本列島の森
森を描いた風景画と言えば、オランダ・フランドル絵画でロイスダールの右に出るものありません。そして彼の作品が、後のコローらバルビゾン派に与えた影響は計り知れないものがあります。
比較的、見慣れた風景画からのアプローチ。そして隣りの部屋ではがらりと印象の違う「アール・ヌーヴォーと象徴の森」が。それでも「森」という太く大きなテーマに沿っての展開故、全く無理なく鑑賞出来るのが不思議でもあります。
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手前:エミール・ガレ「蘭文脚付杯」1890年代 黒壁美術館蔵
内装を担当したアンリ・ラパンによって壁には森や樹木のイメージが元々与えられている庭園美術館(朝香宮邸)です。まさにこの展覧会にうってつけの場所であること今更述べる必要もありません。
でも、決して場所性(場所の力)だけで成り立っている展覧会でないことは前述の構成を見れば分かります。監修者の巌谷國士氏の功績大。巌谷氏無くしてこの展覧会あり得ません。
マックス・エルンスト「灰色の森」1927年 国立国際美術館蔵
および、カール・ブロスフェルトの写真集『芸術の原型』からの作品。
震災以降海外から作品を借りることがとても難しくなってきている昨今ですが、それよりも前に企画された「森と芸術展」では、国内の美術館等が所蔵する作品だけで成り立っています。
巌谷國士氏によるこれまでありそうでなかった「森」というテーマ設定に基づき、しっかりとキュレーションされている展覧会であること、随所で伺い知る事出来ます。
シュルレアリスム作品が並ぶ2階の「書斎」に突如こんなものが!
軽井沢にあるエルツおもちゃ博物館からやって来た木製のおもちゃたちです。
とにかく「森」をテーマにしアリスから川田喜久治、ギュスター・ドレ、アーサー・ラッカム、そしてグランヴィルまでじつに振り幅の広い展示となっています。
岡本太郎やスタジオジブリの男鹿和雄まで最後に違和感なく登場させてしまうあたりもスゴイ手腕。7月3日まで開催しています。
これは行って損無しです(と言うか、行かないと後々泣きます)
展覧会図録に今回の東日本大震災後に描かれた巌谷氏の一文が掲載されています。その中の一言がとても心に響きます。
「人間の未来を信じる者は、心の中にひそかに1本の木を持っている。」巌谷國士
「森と芸術」
私たちの中にひそむすばらしい『森』の記憶をたどってみよう
会場:東京都庭園美術館
開催期間:2011年4月16日〜2011年7月3日
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館
後援:東京都
協力:日本通運株式会社
年間協賛:戸田建設株式会社、東京ガス株式会社
企画協力:株式会社アートプランニング レイ
監修: 巖谷國士[いわやくにお] (美術評論家・仏文学者)
東京都庭園美術館の後、以下の美術館に巡回します。
福井県立美術館 2011年7月30日−8月28日
札幌芸術の森美術館 2011年9月3日−10月23日
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芸術はどのように森を描き、森を思い、森を懐かしみ、森をふたたび獲得しようとしてきたか。 楽園、神話と伝説の森、アール・ヌーヴォーの森、メルヘンと絵本の森、シュルレアリスムの森などを柱に、古今東西の絵画を中心に構成。 神話とメルヘン、風景画とアール・ヌーヴォー、庭園とシュルレアリスム、岡本太郎とアニメーション原画―さまざまなアートの「森」へ誘い、21世紀に贈るすてきな本=図録。
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